天国と地獄の間をなすものはFebruary 2, 2009BSの黒澤明監督特集 今宵は「天国と地獄」を観てしまったのじゃ。 オレは今、ダンテの「神曲 地獄篇」を読んでいるので、この映画のテーマに今まで以上に引き込まれたアルヨ。 本作品の天国と地獄とは・・・ 最初の設定は、丘の上の大きな白い豪邸に住んでいる企業の御曹司の権藤氏が天国なのだろう。 しかし、天国にいる権藤氏は自分の意思を貫くため、全財産を賭けて会社の実験を握ろうとしていた。 工場の現場からは信頼があるが、最近の強引な仕事のやり方で周囲から非難が集まり、家族からも心配されていた権藤氏。 つまり、彼は天国にいたのではなく、自分が目指す天国に一人で上りつめようとしていた・・・。 その対象として、権藤氏の運転手の息子を人違いして誘拐し、捜査の手が及ぶと共犯者を自殺に見せかけて殺してしまった、丘の上の権藤氏の豪邸を眺めながら下町のぼろアパートに住んでいた、病院のインターンの青年の置かれていた状況が地獄ということだろう。 彼は自分のいる位置を地獄と感じ、目の前の丘の上にする権藤氏を天国の住人と思いこみ、誘拐を通じて彼をだまして、大金を奪いこみ、彼の名声も陥れる作戦だった。 事件は進み、権藤氏が全財産よりも運転手の子供の命を助けようと心を動かしたところで、天国と地獄の境界線は動きはじめる。 ラストの死刑台に立つ前の犯人と、全財産を失ったが、家族の和と世間の信頼と自分のやりたいことへの意欲を持った権藤氏が、面接室のガラス越しに対面する場面。 地獄から這い上がるために、大金を手にしながら、天国から引きずり落としたと思っていた権藤氏の静かで幸せそうな姿を見て、犯人は自分が今まで以上の本当の地獄に落ちていくことを悟り、叫びだす。 つかみかけた富と権力をなくした権藤氏が得た状況が天国ということだろう。 つまり天国と地獄とは富の貧富は環境であって、本当のそれは本人の心の状態にあるということなのじゃ。 天国と地獄はあなたの心にある世界。 あなたの心がどの状態にあるかを測る基準、警告、希望なのじゃ。 ダンテの神曲を読みながら、また、地獄の圏谷を下って行こうか。 黒澤明監督の作品に魅せられ、考えさせられたTackeyでした。 ジャンル別一覧
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